- 2026.10.30
- 小児科一般
子どもの便秘症 排便が苦痛にならないように

この記事の要点
- 便秘症とは、便秘によって引き起こされた身体症状に対し、診療や治療が必要になった状態です。排便回数や頻度では決まりません。
- 硬い便により排便が痛くなると、子どもはトイレを我慢して、我慢するから便が一層硬くなる悪循環に陥ります。
- 4歳以下で便秘症と診断された子どもの40%以上が、治療をしても学齢期まで症状が残る場合があると報告されています。早期からの治療が有効です。
- 便もれ、排便時の痛みや出血、がまん姿勢などが見られたら、受診を検討しましょう。
- 治療期間が長くなることもあります。
「便秘」と「便秘症」は少し違います
日本小児栄養消化器肝臓学会などがまとめた「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」(2025年)では、便秘を「便が滞った、または便がでにくい状態」、便秘症を「便秘による身体症状が表れ、診療や治療を必要とする状態」と定義しています。
「便がでにくい状態」とは、排便に努力や苦痛を伴う状態のことで、小児では排便のときに肛門の痛みで泣く、いきんでも排便できなかったり少ししか出ない、排便に長時間かかるといった状態を指します。便秘による症状には、腹痛、おなかの張り・不快感、排便に対する不安、排便時の痛みや出血が含まれます。
つまり、毎日排便出来ていても、いつも少量の便だけであったり、痛がっていたり、トイレに長時間こもっていたりするなら、治療の対象である可能性があります。逆に、排便回数が少なくても、そういった症状がなければ治療の対象ではないでしょう。ただし、痛みがないまま腸に便がたくさんたまっていたり、便がたまりすぎて便もれが起きていたり、便意が弱くなっている場合があります。回数で決めず、便の硬さ・痛み・我慢する様子・便もれの有無など複数の要素から判断します。
なぜ「様子を見る」だけではいけないのか
便秘の悪循環を断ち切ることが治療の中心になります。
太くて硬い便を出すときに痛みを感じたり、肛門が切れたりします。すると子どもは排便を我慢するようになり、便が腸にとどまる時間が長くなります。その間に便の水分が吸収されて、便はさらに硬くなる悪循環に陥ります。
便がたまった状態が長引き、直腸壁が伸展され続けると、腸の神経が鈍感になり、腸管内に便があることに気づけず便意そのものを感じなくなります。こうなると直腸にもっと多くの便が長時間とどまり、拡張が進みます。ここまで進むと治療が難しくなり、長引くことがあります。
便秘になりやすい3つの時期
便秘を発症しやすい時期として、一般的に次の3つが知られています。発症のピークは2〜4歳のトイレットトレーニングの時期とされています。
- 乳児:母乳から人工乳への移行、あるいは離乳食の開始
- 幼児:トイレットトレーニング
- 学童:通学の開始や、学校での排泄を避けること
早めに受診したほうがよいサイン
次のような様子があるときは、受診をご検討ください。
- トイレで排便できるのに、便もれや下着の汚れがある
- 便意があるときに足を交叉させるなど、がまん姿勢をとる
- 排便のときにおしりを痛がる、出血する
- 排便に時間がかかり、なかなかトイレから出てこない
- 排便は毎日あるが、うさぎのようなコロコロ便ばかり
- 直腸脱などの肛門まわりの所見がある
とくに便秘による便もれは、下痢と間違えてしまう場合があるため注意が必要です。また、がまん姿勢も「排便しようといきんでいる」と思われている場合があります。
また、生まれつきの病気による便秘症もあります。生後24時間以降の胎便排泄の遅れ、繰り返す嘔吐、血便、おなかの張り、腹部のしこり、肛門の形や位置の異常など。これらがあるときは、原因を調べる検査が必要になります。
このうち、繰り返す嘔吐、強い腹痛、著しいおなかの張りがみられるときは、順番予約をお待ちいただかず、お電話のうえ早めに受診してください。
便秘のご相談
便秘のご相談は、一般の診療時間内にお越しください。いつからどんな症状があるか、排便の回数と便の硬さをメモしてお持ちいただくと診察がスムーズです。
当日の順番を予約する 電話で相談する(072-744-1085)治療の進め方
治療の目標は、「便秘でない状態」にして、それを維持することです。ここでいう「便秘でない状態」とは、苦痛を伴わず、長時間かからない、週3回以上の排便があり、元気に生活できる状態を指します。回数だけを目標にするわけではありません。
来院時に、たまった便の塊(便塞栓)がある場合は、まずそれを浣腸や摘便処置で取り除いてから内服加療等の維持療法を開始します。塊がない場合は、はじめから維持療法を開始します。
維持治療は、病気の説明・食事と生活と排便習慣の指導・お薬を組み合わせて行います。お薬を加えたほうが、高い確率で、より早く改善します。そのうえで軽い場合は、まず説明と生活・食事・排便の指導から始め、1〜2週間で効果がなければお薬を加えるという進め方をします。
お薬は、浸透圧性下剤(腸の中に水分を保って便をやわらかくするタイプ)から始めます。便中の水分を増やし、便を柔らかくして体積を増やすことで排便を促します。腸を直接刺激する下剤(刺激性下剤)ではないため、痛みを伴わず、また、癖になりにくい(耐性がつきにくい)です。
家庭でできること
我慢させない
便意を感じたら、がまんせずにトイレに行くよう促してください。また、就学後、学校のトイレで排便することが恥ずかしくて我慢してしまうことがあり、便秘の悪循環の入り口になりえます。
食後にトイレに座る習慣
食後にトイレに座る習慣をつけてください。朝食をとってトイレに行く時間を確保するため、夜更かしや寝坊は避けましょう。
よく聞かれるのが水分の話ですが、脱水など極端な状況でなければ、接種水分量を増やして便秘が改善するという根拠はありません。水をたくさん飲ませれば治る、というものではないのです。
トイレットトレーニングとの関係
トイレットトレーニングは、便秘を悪化させたり、便秘の誘因になることがあります。そのため便秘傾向のあるお子さんでは、まず便秘治療を優先し、規則的な排便習慣がついてから始めましょう(お薬を飲みながらトイレットトレーニングを開始してもかまいません)。
トイレットトレーニングは、失敗しても叱らないようにしましょう。努力不足や悪気があって失敗しているわけではありません。遅かれ早かれ、そのうちトイレで出来るようになってくれます。トイレを嫌がるお子さんは、はじめは着衣のまま便座やおまるに座らせるだけからのスタートで構いません。
よくあるご質問
Q. 何日出なかったら便秘ですか?
A. 日数では決まりません。「便が滞った、または便がでにくい状態」が便秘で、治療の対象になるのは、それによって腹痛や排便時の痛みなどの症状がある場合です。いきんでも便が出ない、最後の排便から5日以上たっているときは、既に便塊がたまっている可能性があります。
Q. 下剤を使うとクセになりませんか?
A. 一般的に使用する内服薬(浸透圧性下剤)は、便中の水分を増やして便を柔らかく大きくし、排便を促します。浸透圧性下剤は、腸を直接刺激する刺激性下剤と違い癖になりにくい(耐性がつきにくい)です。
Q. 内服薬で便秘が改善したら、すぐに薬をやめられますか?
A. いいえ。規則的な排便習慣がついた状態で、数か月以上お薬を続けることが多いです。そのあと少しずつ減らしていきます。すぐに薬をやめてしまうと、また便秘症に戻ることが多いです。焦らずいきましょう。
Q. おなかのマッサージや綿棒刺激は効果がありますか?
A. 乳児のおなかのマッサージや肛門刺激は、効くかどうかの結論が出ていません。効果を裏づける根拠がないのが現状です。
Q. 便秘症は、おしっこの悩みと関係がありますか?
A. あります。重い便秘では、便塊がたまって拡張した腸管に膀胱が圧迫されて、おねしょ(夜尿)・昼間のお漏らし(遺尿)、頻尿等が起こることがあります。便秘治療により、これらの改善が期待できます。夜尿症の診察で便秘の有無を確認するのは、このためです。
この記事の監修者
横井 俊明よこい としあき
アネモネこどもクリニック 院長
医学博士/日本小児科学会認定 小児科専門医/日本小児神経学会認定 小児神経専門医/公認心理師
大阪市立大学(現 大阪公立大学)医学部卒業。淀川キリスト教病院小児科 医員、大阪市立大学医学部附属病院(現 大阪公立大学医学部附属病院)小児科・新生児科 講師を経て、2011年4月にアネモネこどもクリニックを開院。勤務医時代は小児神経疾患(発達遅滞・てんかんなど)と新生児医療を専門とし、現在は発達心理相談と乳幼児保健に力を入れています。
所属学会:日本小児科学会/日本小児神経学会/日本小児心身医学会/日本小児アレルギー学会
伊丹市の小児科 アネモネこどもクリニック
発熱・かぜ症状からアレルギー・神経疾患まで、小児科専門医・小児神経専門医の院長が診療します。予防接種、乳幼児健診、心理発達相談(完全予約制)にも対応しています。
〒664-0006 兵庫県伊丹市鴻池6-9-25/電話 072-744-1085
休診日:木曜午後、土曜午後、日曜・祝日
参考文献・出典
- 日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会 編「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2025年版」診断と治療社、2025年10月10日発行 日本小児栄養消化器肝臓学会
- 日本夜尿症学会(現 日本夜尿症・尿失禁学会)編「夜尿症診療ガイドライン2021」診断と治療社、2021年11月15日発行 Mindsガイドラインライブラリ
