- 2026.09.19
- 感染症
インフルエンザの薬はどう選ぶ? タミフル・イナビル・ゾフルーザの違いと年齢別の考え方

この記事の要点
- インフルエンザの薬は、すべてのお子さんに必ず必要なものではありません。年齢・持病・症状の強さから、使うかどうかを一人ひとり判断します。
- 薬を使う場合は、発症から48時間以内の開始が原則です。
- 薬の選び方は「年齢」「インフルエンザA型かB型か」「内服薬か吸入薬か」で変わります。ゾフルーザ(バロキサビル)は年齢によって推奨の強さが違います。
- 薬を使っても使わなくても、少なくとも発熱から2日間は、お子さんから目を離さないようにしてください。
インフルエンザの薬は、必ず飲まないといけないものではありません
日本小児科学会の「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」では、抗インフルエンザ薬について、熱が下がるまでの期間を短くする効果と、早期に投与した場合の重症化を防ぐ効果が示されているとしたうえで、外来での考え方を次のように示しています。
指針が示す「治療の対象」
- 幼児、持病があってインフルエンザが重くなりやすいお子さん、呼吸器の症状が強いお子さんには、薬の使用が推奨されます。
- 発症後48時間以内の使用が原則です。ただし、重症化のリスクが高く症状が長引く場合は、48時間を過ぎていても使用を検討します。
- 持病のないお子さんでも、発症から48時間以内にインフルエンザと診断された場合は、医師の判断で使用を検討します。
- 一方で、多くは自然によくなる病気でもあり、抗インフルエンザ薬の使用は必須ではありません。
「薬を使わずに経過をみる」という選択も、指針に沿った判断のひとつです。当院では、お子さんの年齢・持病・症状の強さ・発症からの時間をうかがったうえで、使うかどうかを保護者の方とご相談しながら決めています。
当院で使用している3種類の薬
日本で使える抗インフルエンザ薬は5種類ありますが、このうちラピアクタ(ペラミビル)は点滴の薬、リレンザ(ザナミビル)は1日2回5日間続ける吸入薬です。当院で使用しているのは、タミフル(オセルタミビル)・イナビル(ラニナミビル)・ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)の3種類です。★
タミフル
(オセルタミビル)
1日2回・5日間 飲む
かたち
粉薬(ドライシロップ)/錠剤・カプセル
気をつけること
体重に応じて量が決まるため、体格の大きいお子さんは粉薬の量が多くなります。吐き気・嘔吐などの消化器症状が出ることがあります。
イナビル
(ラニナミビル)
1回 吸って終わり
かたち
吸入粉末薬(10歳未満20mg/10歳以上40mg)
気をつけること
1回の吸入で治療が終わるため、確実に吸えることが前提です。ぜん息のあるお子さんは気管支のけいれんに注意が必要です。乳製品にアレルギーのある方は事前にお伝えください。
ゾフルーザ
(バロキサビル マルボキシル)
1回 飲んで終わり
かたち
錠剤/顆粒(2025年9月に20kg未満のお子さんへの使用が承認)。
気をつけること
他の薬とは効き方のしくみが異なります。年齢とインフルエンザの型によって、推奨の強さが変わります(次の項目で解説します)。
※かたち・使い方・注意点は、各薬剤の添付文書および日本小児科学会の指針の記載によります。実際の量は年齢・体重によって異なります。イラストは剤形のイメージで、実際の製品の形状とは異なります。
薬の選び方は「年齢」と「インフルエンザA型かB型か」で変わります
タミフル(オセルタミビル)は全年齢で推奨されており、イナビル(ラニナミビル)は、小学生以上で吸入可能であれば推奨されます。一方、ゾフルーザ(バロキサビル)は、年齢、型によって推奨度合が変わります。2025/26シーズンの指針では、次のように整理されています。
12歳以上
ゾフルーザは、タミフル、イナビルと同様に推奨されます。B型インフルエンザに対しては、両剤より優れているとされています。
6歳〜11歳
B型インフルエンザに対しては、ゾフルーザの使用が提案されています。A型インフルエンザに対する使用は、慎重に判断するとされています。
5歳以下
薬が効きにくいウイルスの排出が長引く可能性があるため、ゾフルーザの積極的な使用は推奨されていません。B型インフルエンザの場合は使用が考慮されます。
つまり、同じインフルエンザでも、年齢が下がるほど、またA型であるほど、ゾフルーザ以外の薬を選ぶ理由が大きくなります。
当院での考え方★
- 12歳以上のお子さんには、指針で他の薬と同様に推奨されていることから、ゾフルーザ(バロキサビル)を積極的にお使いしています。1回の内服で治療が終わるため、飲み忘れの心配がない点も利点です。
- それより年齢が低いお子さん、とくにA型と診断された場合は、指針の考え方に沿って、タミフル(オセルタミビル)やイナビル(ラニナミビル)を選んでいます。B型と診断された場合は、ゾフルーザの使用を検討します。
なぜ年齢で推奨が変わるのですか
ゾフルーザによる治療中に、この薬が効きにくくなる変化(PA/I38Xという変異)を持ったウイルスが出てくることが、繰り返し確認されています。指針によると、この変異が出てくる割合は年齢と関係があり、6歳未満で52.2%、6〜11歳で18.9%、12歳以上の思春期の子どもと成人で10.3%と報告されています。変異ウイルスは主にA型(H3N2、H1N1)で検出され、B型で見つかることは極めてまれとされています。
一方で、国内の調査では、変異を持つウイルスが広く伝播しているとはとらえるべきではないとされ、家庭内での二次感染のリスクも高くはないと考えられています。指針も、ゾフルーザについて、他の薬と同等以上の臨床的有用性を示すデータが蓄積されつつあると評価しています。年齢による推奨の違いは「危険だから使わない」という意味ではなく、小さなお子さんではまず他の薬を考える、という趣旨のものです。
なお、2025年9月に体重20kg未満のお子さん向けの顆粒製剤が承認された際、添付文書には「体重20kg未満の小児に対しては、他の抗インフルエンザウイルス薬の使用を考慮した上で、本剤の投与の必要性を特に慎重に検討すること」と追記されています。
飲み薬か、吸入薬かも選ぶポイントです
- 吸入薬(イナビル)は1回で治療が終わりますが、確実に吸えることが前提です。指針では、幼児は多くの場合吸入が難しく、吸入が可能な場合に限って推奨されるとされています。ぜん息のあるお子さんでは、気管支のけいれんに注意が必要です。
- 粉薬(タミフル)は1日2回5日間の内服です。体重に応じて量が決まるため、体格の大きいお子さんでは1回に飲む粉の量が多くなり、飲みきることが負担になる場合があります。カプセルが飲めるお子さんでは、カプセル製剤も選べます。
- 1回内服(ゾフルーザ)は飲む回数の負担が最も少ない一方、前述のとおり年齢と型による制約があります。
当院では、お子さんが確実に飲める・吸えるかどうかも含めて剤形を選んでいます。粉薬が苦手、吸入が難しいなど、ご家庭で心配な点があれば、診察のときにお知らせください。★
発熱でご受診をお考えの方へ
インフルエンザの検査・治療は、一般の診療時間内に行っています。当日の順番予約は下のボタンからお取りいただけます。薬の選び方についてのご相談も、診察のときに承ります。
当日の順番を予約する 電話で相談する(072-744-1085)受診のタイミングと検査について
抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内の使用が原則です。一方で、熱が出てすぐは検査で反応が出にくいことがあります。「何時間たってから受診すればよいか」を一律に決めることはできないため、熱の高さだけでなく、水分が取れているか、ぐったりしていないか、呼吸が苦しそうでないかといった様子とあわせて判断します。迷われるときは、お電話でご相談ください。
当院では、インフルエンザ・RSウイルス・溶連菌・アデノウイルスなどの感染症迅速検査を行っており、結果は当日中にお伝えできます。
薬を使っても使わなくても、異常行動への注意は必要です
インフルエンザにかかったお子さんが、突然走り出す、部屋から飛び出そうとするなどの異常な行動をとることがあります。これは特定の薬によって起こるものではありません。2018年の研究班の検討を受けて、すべての抗インフルエンザ薬の添付文書に「抗インフルエンザウイルス薬の服薬の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている」と記載されています。
指針では、就学期以降のお子さん・未成年の方について、少なくとも発熱から2日間は、保護者の方が転落などの重大な事故を防ぐ対策をとるよう説明することが必要とされています。具体的には、次のような対策が挙げられます。
- 玄関や窓に施錠する
- ベランダに面していない部屋で寝かせる
- できるだけ1人にしない
予防は「薬」ではなく、ワクチンと日常の対策が基本です
指針では、インフルエンザの予防はワクチン接種やマスク着用・手洗いなどの対策が基本であるとされています。抗インフルエンザ薬による予防投与は、病院内で集団発生が起きた場合や、重症化しやすい持病のある方がウイルスにさらされた場合にのみ検討されるもので、家族がかかったからご家族全員が予防で飲む、という使い方は想定されていません。
インフルエンザワクチンには発症を予防する効果があり、学校を休む日数を減らす効果や、入院を減らしたとする報告もあります。日本小児科学会はワクチンの接種を推奨しています。13歳以上の方は原則1回接種です。生後6か月以上のお子さんが新型コロナワクチンと同時に接種することもでき、他のワクチンとの接種間隔の制限もありません。
インフルエンザワクチンのご予約は、予防接種の予約ページから承っています。
予防接種・乳幼児健診の予約ページはこちら
よくあるご質問
Q. 1回で終わるゾフルーザを希望したいのですが、選べますか?
A. 年齢とインフルエンザの型によって、指針で示されている推奨の強さが異なります。12歳以上のお子さんには、当院でも積極的にお使いしています★。一方、5歳以下のお子さんでは積極的な使用は推奨されておらず、6〜11歳でA型の場合も慎重に判断することとされています。ご希望はうかがったうえで、お子さんの年齢・型・症状から適した薬をご提案します。
Q. 粉薬をどうしても飲めません。どうすればよいですか?
A. お子さんの年齢や体格によって、選べる薬が変わります。カプセルが飲める場合や、確実に吸入ができる場合は、別の剤形を選べることがあります。また、薬を使わずに経過をみる選択もあります。診察のときにご相談ください。
Q. 薬を飲まないと治りませんか?
A. 指針では「多くは自然軽快する疾患でもあり、抗インフルエンザ薬の投与は必須ではない」とされています。ただし、幼児、重症化しやすい持病のあるお子さん、呼吸器の症状が強いお子さんには使用が推奨されます。お子さんの状況をみて判断します。
Q. 発症から2日以上たってしまいました。もう薬は使えませんか?
A. 発症後48時間以内の使用が原則ですが、重症化のリスクが高く症状が長引いている場合は、48時間を過ぎていても使用を検討するとされています。まずはご受診ください。
Q. 家族がインフルエンザです。予防のために薬をもらえますか?
A. 抗インフルエンザ薬の予防投与は、院内での集団発生や、重症化しやすい持病のある方がウイルスにさらされた場合に限って検討されるものです。ご家族の感染をきっかけとした予防内服は、一般的な対応ではありません。日ごろの予防は、ワクチン接種と手洗い・咳エチケットが基本です。
この記事の監修者
横井 俊明よこい としあき
アネモネこどもクリニック 院長
医学博士/日本小児科学会認定 小児科専門医/日本小児神経学会認定 小児神経専門医/公認心理師
大阪市立大学(現 大阪公立大学)医学部卒業。淀川キリスト教病院小児科 医員、大阪市立大学医学部附属病院(現 大阪公立大学医学部附属病院)小児科・新生児科 講師を経て、2011年4月にアネモネこどもクリニックを開院。勤務医時代は小児神経疾患(発達遅滞・てんかんなど)と新生児医療を専門とし、現在は発達心理相談と乳幼児保健に力を入れています。
所属学会:日本小児科学会/日本小児神経学会/日本小児心身医学会/日本小児アレルギー学会
監修日:2026年9月16日
